伊勢谷スポーツ俱楽部特別企画天理高校ラグビー部「花園優勝に向けて天理らしく」
太安主将へインタビュー

花園(全国高校ラグビーフットボール大会)出場、そして日本一を目標に練習に励んできた天理高校ラグビー部。 奈良県予選の決勝、御所実業との熱戦を制し、4年ぶりに歓喜の輪が広がった。1週間後の花園開幕を前に、チームの強み、御所実業戦の秘話、そして彼らに刻まれたお道の薫りに迫るべく太安たいあん善明主将に話を聞いた。

悔しさが生んだ“考えるラグビー”

―まずは花園出場おめでとうございます!

ありがとうございます。

―昨年の奈良県予選決勝では5-28で御所実業に敗れてしまいました。そのときの悔しさは新チームにどのように活かされましたか?

昨年は1月と5月の公式戦で御所実業に勝利したこともあり、どこか自分たちの中に「秋も勝てるだろう」という甘い気持ちがありました。そんななか迎えた奈良県予選決勝では、先制トライを許し焦ってしまい、頭がパニックのままプレイしてしまいました。その経験があったので、「二度とあんな思いはしたくない」一心で、今年1年間は自分たちで“考えるラグビー”を心掛けて練習してきました。

―“考えるラグビー”について具体的に教えてください。

例えば2月に行われた近畿大会(近畿高校ラグビーフットボール大会)の関西学院戦(34-12)では、ハーフタイムで前半(12-12)の相手の攻め方や特徴から対策を考えて後半に挑み、それが見事に結果に表れた試合でした。

―近畿大会の東海大仰星戦(22-31)、3月の選抜(全国高校選抜ラグビーフットボール大会)の東福岡戦(5-25)など、強豪校と対戦して得るものはありましたか?

強豪と言われる東海大仰星や東福岡との試合では、FW(フォワード)はラインアウトモール、BK(バックス)はアタックディフェンスが通用しませんでした。しかし、早い段階で自分たちの弱点が見つけられたので、秋の御所実業戦に活かそうと思っていました。

―東海大仰星戦は前半苦しんでいましたが(10-31)、後半では修正されていましたね。プレイだけでなく修正力や“考えるラグビー”が今年のチームの持ち味のように感じました。

去年はプレイがチームの強みでした。ただ試合中は思い通りにいかないことの方が多いので、今年はそんな場合にどう修正するかを自分たちで考えることを大切にしてきました。

―修正力や考える力はどのように高めていったのですか?

練習中にうまくいかないことがあったとき、今まではコーチに指摘されるまで改善点に気付けないことが多かったんです。しかし、今年は自分たちで話し合い、改善点に気付いた選手が全員に共有するように心掛けてきました。選手同士で言い合える環境を大切にして、常に試合をイメージしながら練習してきました。

勾田寮内に掲げられていたチームスローガン。

ビハインドでも揺るがなかった自信

―御所実業戦(15-7)は前半に先制トライを許しましたが、終了間際にキックで取り返しましたね。キックを選択したのはどのような背景があったんですか?

先制される前に、相手の強みであるモールを止めることができていたので、自信を持つことができました。トライはされましたが、その後も敵陣(御所実業のエリア)でプレイすることができていたので、後半も敵陣に攻めていける自信がありました。なので、前半終了間際にペナルティーを得たときに少しでも点差を詰めようとキックで3点取ることを選択しました(前半は3-7)。ハーフタイムはリードされていましたが、流れは天理にあると感じていました。

―後半、ラインアウトモールで逆転(8-7)したときは、どんな気持ちでしたか?

すごく嬉しかったです!御所実業の強みであるモールを抑え、なおかつ自分たちのモールが通用したのがすごく嬉しかったです。

―さらにWTB(ウィング)田中功栄選手のゲインから、FWでつないだトライで追加点(15-7)。素晴らしかったですね。

自陣でこぼれ球を田中が取ってそのままゲインしたんですが、みんながカバーに来ていたので、仲間を信じて相手の裏に蹴って、みんながサポートに走り、パスをつないでトライを決めることができました。

―試合を通して流れが天理にあるように感じたのですが、プレイしながらも感じましたか?

なるべく御所実業にチャンスを与えないために、相手にラインアウトを与えないことを意識していました。キック合戦になっても外に出さずにキックを蹴り返して、敵陣エリアでプレイしつつ、「相手が出してくれたら有難い」くらいの気持ちでした。

キック合戦でもエリアを取れていて、ディフェンスでも相手のアタックを前で止められていたので、流れが天理に傾いたのかもしれません。

―タックルも気持ちが入っていましたね。

去年の御所実業戦を経験しているメンバーが残っていて、その悔しさを晴らしたい気持ちと、自分たちが勝つんだという強い気持ちがタックルに込もっていたのだと思います。

―優勝が決まった瞬間はどうでしたか?

この1年間、御所実業戦に照準を合わせて練習してきたので、嬉しかったです。

―以前取材させてもらったOBの宮本啓希さんや竹内健人さんが「『一手一つ』の精神はプロや社会人でも活きている」と仰っていました。「一手一つ」の大切さを感じるときはありますか?

新チームになった当初はバラバラでした。口では「御所を倒して日本一」と言っているのに、練習にも生ぬるい部分があったので、自分を中心にみんなの気持ちを一つにしたいという思いはありました。

そこがバラバラだと学校生活や練習でも気持ちが入りませんし、プレイにも影響します。全員が同じ気持ちで取り組み、そのために思っていることを言い合える関係性作りを意識してきました。

―気持ちが一つになっているチームは強いですよね。そのまとまりも今年のチームの強みなのだと感じました。

ありがとうございます。

制服姿の太安選手、グラウンドとは違う高校生らしさを感じた。

―昨年は木村豪志選手の重大な怪我がありましたね。

木村さんは卒業された今でも自分たちの試合を毎試合見て助言を下さり、本当に力になって頂いています。

木村さんの怪我を通して、定刻参拝やおつとめの時間を疎かにしないよう心掛けるようになりました。

―人のために心を使える、人のために祈れる空気感があるのですね。

今も怪我をしている選手がたくさんいるので、彼らのことを思いながらおつとめをさせてもらっています。ラグビーだけ一生懸命していても良くないと思うので、学校生活、学校行事、また学校として大切にされているおつとめも一生懸命させてもらいたいと思いました。

―太安選手も含めて、高校入学を機に天理教を知った選手が多いのに、なんだか嬉しいですね。

ありがとうございます。

―たくさんの天理教の方々が応援されています、最後にメッセージをお願いします。

4年ぶりの花園で、待ってくださっていた方々もいらっしゃるので、期待に応えられるように、優勝に向けて天理らしくひた向きに、頑張っていきます。

―ありがとうございました!

天理高校ラグビー部は1週間後、12月27日に開幕する「花園」こと「第102回全国高校ラグビー大会」にシード校として出場する。初戦は12月30日、青森山田(青森)VS明和県央(群馬)の勝者と対戦。応援よろしくお願いします!

(文:伊勢谷和海写真:廣田真人)

伊勢谷和海/ ISETANI KAZUMI

1984年愛知県生まれ。天理高校、天理大学卒業後、天理高校職員(北寮幹事)として勤務。好きなスポーツは野球・陸上・相撲・ラグビーなど多岐にわたる。スポーツが好き過ぎて、甲子園で校歌を数回聞くと覚えてしまい、30校以上の校歌が歌える。スポーツ選手の生年月日・出身校も一度見たら覚える。高校野球YouTubeチャンネル「イセサンTV」を開設。ちまたでは「スポーツWikipedia」と称される。

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