こどもおぢばがえりひのきしん
7月27日から8月6日にかけて、こどもおぢばがえりが4年ぶりに開催された。青年会本部では、カレー食堂や駐車場でのひのきしんに、直属分会委員長と実行部員が参加。子どもたちの笑顔のために汗を流した。
ひのきしんの現場で、一人の分会委員長さんに目が止まった。浪華分会の瀧川元喜(37)さん。欠員が出た現場に移動してくれる人を探していたとき、進んで手を挙げてくださった。
しかも、より大変な現場に変わったにも関わらず、勇んでひのきしんをされている。瀧川さんがいる現場ではいつも笑顔が絶えず、周りの人にも勇んだ心が映っているかのようだ。
どうしてそれほど勇んでひのきしんができるのだろう?
気になった筆者は、話を聞いてみることにした。
普段は何をしているんですか?
教会長をしながら、時々バイトに行ったり、雅楽をしたり、後は頼まれたら運転に行ったり。普通のことしかしていません。私なんかがインタビューを受けて本当に良いんでしょうか?
もちろんです。今日、現場の変更があったとき、真っ先に手を挙げてくださいました。どのような思いだったんですか?
どの現場でもありがたいことには変わりありませんが、少しでもできることがあるなら進んでさせてもらおうという思いでいました。
そうだったんですね。なぜそこまで、こどもおぢばがえりのひのきしんに熱心に取り組むことができるのですか?
実はここ数年、精神的に落ち込んでいたんです。その気持ちが晴れたきっかけが、少年会活動でした。
私は、28歳のときに布教の家「岡山寮」に入寮し、そのまま1年ほど残って単独布教に歩きました。「にをいがけ・おたすけこそが自分のやるべきことだ!」と意気込んでいたのですが、あるとき、そうしたおたすけ最優先の姿勢に対して、Aさんという方から小言を言われたのです。
そのことにとても腹を立ててしまって、自分のやってきたことは何だったのだろう? 自分はおたすけをしてはいけない人間なのだろうか? と、深く悩んでしまいました。
またAさんに会うかもしれないと思うと出かけることすら恐ろしくなり、精神的に不安定になることが増えました。
それでも、教会の御用だけはやらなくてはと頑張っていましたが、ついには私の様子を見ていた妻から、「もうお願いだから頑張らないでほしい」と言われるほどになってしまいました。
そんなとき、岡山での布教時代、教え導いてくださった先生に相談しました。
すると、「自分のことで悩んでいるときは、おたすけができていないときだ。そんなときこそおたすけをすれば、悩みも自然と治まってくるよ」と言っていただき、その言葉でようやく心を立て直すことができました。
そして、再びおたすけに歩きだすようになりました。ちょうどそのときに始めたのが、少年会活動だったんです。
そんなことがあったんですか。少年会活動は、どんなことをしているんですか?
コロナで中止していた毎月の子ども会を、去年の夏から再開しました。
食事付き子ども会という形にして、ゲームをしたり、一緒にご飯を作ったりしながら楽しく活動しています。子どもたちも喜んでくれて、今では20人くらいが参加してくれるようになりました。
その参加者の中から、こどもおぢばがえりに行きたいという子も出てきてくれて、今年は団参を組むこともできました。
それはうれしいですね。先程も、帰参する子どもたちに「おかえりなさい」と積極的に声を掛けておられました。それも、こどもおぢばがえりに参加してもらうことのうれしさが分かるからこそなのかなと感じました。
そうですね。おぢばに人をお連れすることの大変さやありがたさは、布教時代にも強く感じていました。
だからこそ、「喜ばさずには帰されん」という気持ちに、自然となりますね。
今回のこどもおぢばがえりでも、帰ってくる子どもたちに少しでも喜んでもらいたいと思ってひのきしんしています。
勇んでひのきしんされていた理由が、分かった気がします。最後に、今後の夢や目標を教えてください。
おたすけに歩くことと、子ども会の活動は、これからも続けていきたいと思っています。
今、こども食堂をされている教会が増えていますよね。私の教会でもこども食堂をしたいと思っていましたが、教会があるのはタワーマンションが立ち並ぶような、富裕層の多い地域なんです。
こども食堂と聞くと、子どもの貧困を解決するためというイメージがあったので、うちでは難しいかなと思っていました。
しかし、子ども会に参加してくれている子たちの話を聞くと、夜の9時まで親が家に帰ってこないから、いつもお腹をすかせている、というような声が多かったのです。
お金には困っていない、けれども、孤独で寂しさを抱えていたり、居場所がないと感じていたりする子どもがたくさんいることに気付きました。
そんな子どもたちの居場所になれるような教会になれるようにしたいと思っています。
暑い中でも笑顔で、子どもたちのためにひのきしんに励む姿の裏には、つらい体験と、帰ってくる子どもたちを喜ばせたいという、誠真実の精神があった。
話を聞いたあと、帰ってくる子どもたちへの「おかえりなさい」に、いつも以上に心がこもった。どうやら瀧川さんの勇んだ心が、私にも映ったようだった。
(文=吉井 勇一朗)
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