4食目『味どおらく』
青年会の誇る「デブ部」が、懐かしいお店から行きたいと気になっていたあのお店まで、天理のグルメをご紹介します。
最近デブ部に一つの意見が寄せられている。
「相方さんってデブじゃないよね?」
1件、2件ではない。
それなりの件数の意見だ。
正直に言おう。
その通りである。
最近、相方のタダミール部員は、自転車移動をしている。
これはデブにとって自殺行為であるが、彼はその苦行を続けることで、痩せてしまったのだ。
私自身痩せていく彼の姿を黙認していたのだが、こうなってしまっては仕方ない。
残念だが、彼を切る覚悟を決めた。
彼にその旨を伝えると、少し笑ってこう答えた。
「部長。デブとは容姿のことを指すのではない。心を指すものですよ」
ハッとした。
部長である私としたことが、大切なことを忘れていた。
デブとして大切なことは、自分がデブであるというプライドだということを。
しかし多くの読者からの意見をいただき、無視できないのも事実だ。
そこで、彼に一つの提案を持ちかけた。
「大食い対決」だ。
私に勝てれば存続。負ければ脱退。
彼の言葉が、その場しのぎのセリフでないことを証明するためにはこれしかない。
彼は二つ返事で答えた。
そんなデブ部の大食い対決にご協力くださったのが、たこ焼きの老舗「味どおらく」さんだ。
天理本通り内にあり、天理教教会本部から徒歩5分。
古くから、学生や修養科生が多く利用する。
私も、若い頃よく仲間と食べたのはいい思い出である。
今回注文したたこ焼きの個数は、150個。
YouTuberじゃあるまいし。
人生でこんな個数のたこ焼きを注文するとは思わなかった。
お店に着くと、素晴らしい手際で、大量のたこ焼きを焼いてくださっていた。
熟練の職人技だ。
(味どおらくさん無茶な要望にお答えいただきありがとうございます)
「量エグwwwちょっと無理ちゃう?」
受けとった150個のたこ焼きを見て、私とタダミール部員は、少し後悔した。
記念に写真はとったものの、この時の笑顔は少し無理をしている。
とは言え、もう後には引けないので、戦場に場所を移した。
机の上に広げてみるとたこ焼きは山となった。
パックに入っているから、大したことのないように見えるが、150個である。
開始前にYouTubeを見ても、二人で150個食べているYouTuberはなかなかいない。
蓋を開けてみるとなんとも美しい。
関西では、一家に一台たこ焼き器があるというが、自宅で焼いてもなかなかこうはならない。
ソースと鰹節の香りが部屋中を包み込むと、先ほどの後悔は消え失せた。
「150個いける気がする!」
デブの証明。そして、デブ部としての誇りをかけた戦いの火蓋が切って落とされた。
いざ食べようと串に刺したたこ焼きは、愛おしい顔でコチラを見ている恋人のようだ。
「早く食べて」とせがんでくる。
このインサート写真を撮っている時間が辛かった。
一口で口の中に放り込む。
アツい。火傷しそうだ。
だが、それでいい。
それがいい。
口をホフホフさせながら、中のトロトロの生地を楽しむ。
出汁と具の味が見事にマッチしている。
主役のタコはまだ口の中を泳いでいる。
生地が口の中の温度に馴染んでくるまで待つのだ。
「コリッ」
ここぞというタイミングでタコを噛むと、口がタコ一色になる。
この瞬間にたこ焼きが、たこ焼きとして完成される。
美味い。
たこ焼きを発案した人にお礼を言いたい。
タダミール部員は若さを活かして、快速に食べすすめ、私より少し先に1パック目を完食。
時間にして、5分くらいだったのではないだろうか。
たこ焼きの美味しさと一口サイズの大きさに余裕すらも感じていた。
しかし、その時は急に訪れる。
2パック目の途中のこと。
私の手が止まった。
粉物の腹に溜まるスピードは、想像以上だったのだ。
たこ焼きは最初同様、食べて欲しそうにコチラを見るが、もう私はそちらを見ることも憂鬱になってしまっている。
そんな私を尻目に、隣ではタダミール部員が化け物のような形相で、たこ焼きを掻き込んでいく。
怖いよ、タダミール。
「部長。デブとは容姿のことを指すのではない。心を指すものですよ…」
彼の一言が、一切箸の進まなくなった私の胸に深く刺さっていった。
私は負けを悟った。
結果。
タダミール部員、53個。
私、41個。
完敗だった。
誰ですか?
彼がデブじゃないって言ったの?
彼は、デブです。紛れもない、真性のデブです。
もう二度と言わないでください。
私に恥かかさないでください。
タダミールさんすいませんでした。
これにて一件落着。
P.S.余ったたこ焼きは、スタッフが美味しくいただきました。
(デブ部サウナ部長)
◯味どおらく
住所 奈良県天理市三島町586
電話 0743-63-2337
予算 〜1,000円
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